
こんにちは。アスカネットの飛鳥です。
先日8月9日は「ハックの日」。金沢市で開催された「シビックハックナイト」というイベントに参加してきました。
このイベントは、エンジニアかどうかは関係なく、「自分たちの街の課題をどうにかしたい」という問題意識を持つ人なら誰でも参加できる、市民協働の場です。私もメンバーとして関わらせていただいています。
コロナ禍で一時期は活動が途絶えていましたが、今回久しぶりのリアル開催ということで、私も楽しみにしていました。
多様な人々が集い、地域の課題を語り合う
急な開催だったので参加者は多くはありませんでしたが、行政の方や、はじめましての方も何人か参加され、熱のこもった対話の場となりました。
今回話し合われたのは、主に以下の2つのテーマです。
- 地域活動に市民団体の力を借りたい!
- なかなか時間通りに来ない北陸鉄道バス問題
話し合った内容は、こちらのサイト「マッチ箱」にも掲載されています。
特にバスの問題は、私自身、車の運転ができないため、移動手段としてバスを利用することが多く、非常に身近な課題です。今後もこのテーマに深く関わり、何か良い解決策やサービスに繋げていきたいなと感じました。
しかし、この日、私が最も大きな「気づき」を得たのは、イベント終了後の懇親会の席での、ある出来事でした。
懇親会での発見したアクセシブルなQRコード注文システムとの出会い
そのお店は、テーブルのQRコードをスマートフォンで読み取り、表示されたメニューから注文する、今ではよくあるシステムでした。
正直なところ、私は少し身構えていました。
なぜなら、こうした注文システムの多くはアクセシリティへの配慮が不十分で、スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)では操作できず、私にとっては「手も足も出ない」ことが珍しくないからです。
しかし、そのお店のシステムは違いました。
QRコードから開いたページは、スクリーンリーダーでメニューがきちんと読み上げられ、私は自分の力で、スムーズに注文を完了することができたのです。
当たり前のことのように思えるかもしれません。しかし、これまで数え切れないほど悔しい思いをしてきた私にとって、この体験は静かな「感動」でした。
隣に座っていた方は、私がスマホを操作してメニューを聞いている姿に、とても驚いていました。
「普段、視覚障害者と接点がなければ、スマホを使いこなして注文する姿は、なかなか想像がつかないですよね」
そんな会話から、私が普段どのようにスクリーンリーダーを使っているか、実演を交えてお話ししました。
「伝えること」の難しさと、その先にある可能性
その中で、私は改めて一つの壁に気づかされます。
「他の多くのお店では、このシステムがうまく動かないんです」と説明しようとしても、その技術的な問題を、言葉だけで的確に伝えるのが非常に難しいのです。
「フォーカスが当たらない」「カーソルが合わない」…専門用語を使っても、その「もどかしさ」の本当のところは、なかなか伝わりません。自分の説明力不足に、もどかしさを感じることもあります。
この経験は、私に大切なことを改めて気づかせてくれました。
完璧な言葉で説明すること以上に、実際に「見て」「体験」してもらうことが、時には何よりの理解に繋がるのだと。
Webサイトやサービスを発注する側の人、そして私たちのように開発・制作する側の人間が、こうしたざっくばらんな場で、障害のある人が「普段どのようにテクノロジーを使っているか」「そして、どんな場面で困っているか」を共有すること。
これこそが、本当に使いやすいサービスを生み出すための、最も重要で、最も確実な一歩なのかもしれません。
今回の体験は、私が目指す「誰もが使いやすいデジタル体験の設計」という仕事の意義を、改めて強く感じさせてくれる、非常に貴重な時間となりました。