
こんにちは。アスカネットの飛鳥です。
先日、12月23日(火)に、私の母校である石川県立盲学校へ行ってきました。 「令和7年度 進路を考える会」という行事で、講師としてお話をさせていただくためです。
対象は、中学部・高等部の生徒の皆さん、そして先生方と保護者の皆さん。 約30名の後輩たちや先生、保護者の方々を前に、20分という短い時間でしたが、今の私を作っている「点」と「線」の話をし、その後40分の座談会で質疑応答を行いました。
今回は、その講演の内容と、そこで感じたことついてレポートします。
「偉い先輩」としてではなく、「変わった先輩」として
今回のテーマは「進路を考える上で大切なこと」。
こう書くと、なんだか立派な成功者が「君たちも努力すれば夢は叶う!」と熱弁するように聞こえるかもしれません。 でも、私が話したのは真逆のことです。
「失敗してもいい。とりあえず『点』を打とう」
これが一番伝えたかったメッセージでした。

私の経歴は、決して順風満帆ではありません。 スライドでも正直に見せましたが、私は高校卒業後、一度一般の大学に進学しています 。 でも、そこで挫折して1年で退学。「あーあ、人生終わった」と絶望して、盲学校に戻ってきました 。
マッサージ師という仕事も、最初から大好きだったわけではありません。 「視覚障害=マッサージ」と決めつけられるのが嫌で反発していた時期もありました 。
そんな「黒歴史」や「葛藤」も含めて、今の「アスカネット(鍼灸マッサージ師 × IT × 著者 × 視覚障害当事者としての活動 × シビックテックなどなど)」がある。 だから、かっこいい話ではなく、泥臭い話をしようと決めました。
ルドルフと星座の物語
講演では、2つのたとえ話を使いました。
1. 赤鼻のトナカイ(ルドルフ)の秘密
もうすぐクリスマスということで、「赤鼻のトナカイ」の話をしました。 みんなと違う「赤鼻」は、普段は笑いものかもしれない。 でも、霧の深い夜には、その赤鼻こそが道を照らす最高の「武器」になる 。

「視覚障害」という特性も同じです。 見えないことは不便だけど、見えないからこそ気づけること、できる発想がある。それが私の今のIT活動や執筆活動に繋がっています。
【当日の気づき】 意外だったのは、生徒の多くが「赤鼻のトナカイ」の歌は知っていても、その背景にあるストーリー(ルドルフという名前や、コンプレックスが武器になる物語)を知らなかったこと。「へぇ、あの明るい曲にそんな意味があったんだ!」と、興味深そうに聞いてくれる子がいたのが印象的でした。
2. コネクティング・ザ・ドッツ(点と点をつなぐ)
もう一つは、スティーブ・ジョブズの有名な言葉。 「バラバラの失敗(点)が、いつかつながって自分だけの星座になる」という話です 。
大学に行きたいと決心し、勉強するもうまく行かず色々な方のお世話になったこと。 大学生活中での経験や失敗。 大学を辞めたこと。 盲学校に戻ったこと。 大学に行ったからこそできた繋がり。 Webや、動画制作。
その時はバラバラで無意味に見えた行動(点)が、振り返ってみると一本の線(アスカネット)になっている 。

ただ、反省点もありました。 「夜空の星をつなぐ」という視覚的なイメージが、視覚情報が入りにくい盲学校の生徒さんには少し伝わりにくかったようです。
そこで、「星という『点』には、それぞれ大きさや形、特徴といった違いがあること。そして、その異なる星同士を結ぶことで色々な星座ができていること」を、言葉で丁寧に説明し直しました。 視覚情報が少ない人、あるいは視覚経験がない人にどう伝えるか。その難しさと大切さを、私自身も改めて学びました。
生徒たちからの質問「ライスワークとライフワーク」
講演後の座談会では、事前にいただいた質問や、その場で出た質問に答えました。 特に盛り上がったのが「働き方」の話です。
私は今、病院でのマッサージ業務を「食べるための仕事(ライスワーク)」、アスカネットでの活動を「心が喜ぶ活動(ライフワーク)」として両立しています 。
「どっちか一つに絞らなくていい。安定があるから冒険ができるんだよ」と伝えたところ 、生徒さんからはこんな鋭い質問が飛び出しました。
「ライスワークとライフワーク、自分の中でどう区別していますか?」
私はこう答えました。 「実は、きっぱり分かれているわけじゃないんです。今はライフワーク(楽しみ)としてやっている活動も、昔はライスワーク(生活費)のために必死でやっていた時期もある。逆に、ライスワークだと思っていたものが、いつの間にか生きがいになることもあります。」
25年前とは違う「自立」の形
また、中高生ならではの切実な質問もありました。
「関東で一人暮らしをする時、何が困りましたか?どうやって工夫しましたか?」
私が上京したのは25年以上前。スマホもなければ、インターネットもまだ未発達な時代です。 「今はスマホで何でも調べられるけど、当時は情報がないことが一番不便だった」と振り返りました。
だからこそ、点字図書館や視覚障害者センター、役所の福祉課など、「人」や「団体」に自分から繋がりにいくこと、声を上げることが生存戦略だったと話しました。 ツールは進化しても、「自分からヘルプを出す力(受援力)」の大切さは変わらないのかもしれません。
まとめ:まずは「軽率」にやってみよう
最後に、後輩たちへこの言葉を送りました。
「まずは『軽率』にやってみよう! 失敗してもネタになる」
新しいことをすれば、失敗もするし、人に笑われることもあります。 でも、その失敗という「点」がないと、将来どんな「星座」が描けるかは分かりません 。
人によっては、失敗が怖くて行動できないという人もいますが、心配することはありません。過去は変えられますから。
「過去を変える」といっても、タイムリープして歴史を変える「なんとかリベンジャーズ」みたいなのとは違いますよ(笑)。 タイムリープができなくても、こうやって過去の失敗をネタにしたり、「失敗だった」と思う経験を次に活かしたり。やり続けることで、「あれは失敗じゃなかった」と思える瞬間が来ます。
なので、「失敗を恐れてやらない」というのが一番だめな行動だと思います。(ただし、物理的にも、経済的にも死なないルートは確保しておくのが大前提ですが。)
私としても、母校で話すという経験は、また新しい大きな「点」になりました。 この点が、また何かに繋がっていくのを楽しみにしています。
参加してくださった生徒の皆さん、先生方、本当にありがとうございました!
